スーパーボウル・ウィークは、スポーツでもっとも飽和したマーケティング環境。どのブランドも、叫んでいる。P&G に必要だったのは、その中を切り裂く何か。もうひとつの広告枠ではなく、観客が自ら探しにくるエンターテインメント。フォーマットは、NFLのスター選手を見せ、P&G のブランドを自然に組み込み、Twitch と配信プラットフォームでネイティブに機能する必要があった。
面白さを生んだ制約は、これ。スーパーボウルに出られなかった、NFLの選手たち。時間と、競争心と、それをぶつける試合のないスターたち。
「主役は、アスリート。競技は、変数。あとは、コントラストが語る。」
クリエイティブの核心は、コントラスト効果だった。激しい身体能力で知られるアスリートを、精度と繊細さを求める競技に置く。競技としての緊張は下がり、エンタメとしての価値は跳ね上がる。NFL選手が卓球をする。それは本質的に見入ってしまう。彼らのアイデンティティとフォーマットの「ギャップ」が緊張を生み、それが笑い、ライバル心、そして本物の驚きとして解けるから。
番組のフォーマット、グラフィック、ブランディング、そして Twitch 統合を、ひとつのシステムとして設計した。スポンサーシップは、後づけではなく、番組の構造そのものに組み込んだ。Gillette のプレイヤーカードが、各選手を紹介する。Tide の演出が、要所のプレーに句読点を打つ。スポンサーは、番組を邪魔していなかった。番組の言語を、話していた。
制作は、Twitch 優先で設計した。チャット統合、リアルタイムの観客とのやりとり、配信ネイティブのグラフィック。だから番組は、デジタルにぎこちなく移植したテレビ放送ではなく、このプラットフォームに「もともと属している」ように感じられた。
出場選手には、Trevor Lawrence、Jamaal Williams、Ka'imi Fairbairn、そして優勝した Trent Taylor がいた。競技の瞬間は、本物だった。試合の合間のコンテンツは、フットボール中継では決して許されないかたちで、選手の人格がにじみ出るように設計した。
ライブ番組の指揮は、ディレクターの Frank Samson。僕は、クリエイティブ開発を率いた。フォーマット設計、ブランド統合のフレームワーク、そして受け身の視聴ではなく双方向のコンテンツとして機能させる、配信体験の層。


Battle of the Paddles は、あることを証明した。ブランドが出資したコンテンツが、「広告っぽく」感じられる必要はない。スポンサー統合が、邪魔ものではなくエンタメの構造の一部であるとき、観客は「番組」と「ブランドの瞬間」を区別しなくなる。両方を、同時に観ている。
NYXアワードと Shorty Honoree の評価は、視聴数がすでに示していたことを裏づけた。このフォーマットが効いたのは、NFLとの結びつきのおかげじゃない。クリエイティブの構造そのものが、それ自体でエンタメとしての価値を生むように設計されていたから。
クレジット:ディレクター Frank Samson、制作 Boombox Group